さまざまなウェアラブル(着用・装着型)機器の登場によって、電源の確保が問題となっている。そこで、人間の日常動作から発電する研究が進められており、着用しているだけで、動作の際に生じる摩擦から電力を取り出す「ウェアラブル摩擦発電」の試みが進められている。関西大学の谷弘詞教授らは、フッ素フィルムとポリウレタンフィルムとの間で生じる摩擦による電荷移動を利用し、それらを導電性布と組み合わせることで、5cm角、厚さ6mmで10μW(マイクロワット:10-6=100万分の1W)の電力を生じる複合材の開発に成功した。構造がシンプルなため生産性が高く、柔軟性もあることから、ウェアラブル電源としての可能性が期待できる。一方、同大は帝人と共同で、ポリ乳酸繊維を用い組紐構造を採用することで、「伸び縮み」「曲げ伸ばし」「ねじり」といった動きのセンシングが可能な圧電繊維も開発している。ポリ乳酸繊維を圧電体として利用することで布状やロール状の圧電素子が提案されている。
また、豊橋技術科学大学の石井佑弥助教らは、中心部にポリ乳酸を用い、その周囲をフッ素系の樹脂で囲んだナノファイバーを作製することで、電気をかけると膨張し、圧力をかけると電気信号を出す仕組みを考案した。これにより、ファイバー自身をアクチュエーターや圧力センサーとして活用できるものと期待している。