原子層あるいは分子層からなる究極のナノスケール(10億分の1mスケール)薄膜材料である層状薄膜材料には、さまざまな機能をもつ材料が見つけられてきたが、磁石として働く薄膜材料は見つかっていなかった。しかし、2017年にクロムをベースにした、たとえば、三ヨウ化クロム(CrI3)の分子層材料(molecular layer material)において、真に二次元の強磁性が発見された。具体的には三次元のCrI3が61K(-212.15℃)以下の温度で自発磁化を示すのに対して、単分子層は45K(-228.15℃)以下で自発磁化を示した。さらに面白いことに、2分子層では磁化は現れず、3分子層では再び現れることも明らかになった。層状薄膜材料に磁性材料が加わることは、その応用分野を広げる意味で大変重要である。さらに、二次元系では磁化が不安定になるとの理論があり、分子層数の違いによる特性の変化もあることから、磁性の基礎理論を検証するプラットフォームとしても非常に興味深い。