抗原と抗体との関係は、よく鍵と鍵穴の関係に例えられるように特異性が極めて高く、特定の標的分子には特定の抗体のみが特異的に結合することが知られている。これまで、この抗体を模した人工抗体を作製する試みが数多くなされてきており、抗体の構造を高分子材料で模したプラスチック鋳型によって抗原と結合することで除去する方法などが記憶に新しい。近年では、抗体のように標的分子に強く結合する人工ナノ粒子(artificial nanoparticle)を用いたプラスチック抗体が報告されており、うまく作用すれば、安価で大量に供給できる可能性があり、注目されている。アメリカのカリフォルニア大学のケネス・J・シア教授と九州大学の三浦佳子教授らは、標的分子を鋳型にして重合することで、標的分子と相補的に結合する構造を構築できる分子鋳型重合法を適用。アクリル酸とN-tert-ブチルアクリルアミドなどの機能性モノマーと標的分子であるメリチン(ミツバチ毒素)から生成されたナノ粒子が標的分子であるメリチンに強く結合することを報告した。さらに、標的分子を用いずに強い結合性をもつナノ粒子の合成にも成功しており、さまざまな応用が期待されている。