2000年、アメリカのボイシ州立大学のバーナード・ヤーク教授らはDNAの二重鎖形成を利用したDNA分子ピンセット(DNA tweezers)を報告している。分子マシンとしての利用を考えた場合、そのエネルギー源はDNAであり、同時に廃棄物ともなる。廃棄物となったDNAが蓄積されることで効率の低減を避けるには、光を駆動源とする光応答性のDNAの開発が必要である。名古屋大学の浅沼浩之教授は、1999年にDNA二重鎖の形成と解離の光制御を実現して以来改良を続け、2007年にD-トレオニノールを介してアゾベンゼンを導入することで、高効率な光応答性オリゴヌクレオチドを作製。現在、ハイブリダイゼーション(別個の相補的なDNA、RNA分子同士を特異的に会合させる操作)の光制御や、400nm(ナノメートル:10-9m)以上の可視光のみで制御することに成功している。遺伝子発現の光制御や光駆動型DNAマシンなどへの応用のほか、DNAナノ構造体の構築や制御への応用が可能になるものと考えられる。