ドイツのマルティン・ルター大学のグループは、天然の綿に人為的に所望の機能を付与する技術を報告した。グルコースのC2位(複数のCHO、HC、OH、CH2OHからなるグルコース〈糖質〉構造の2番めに位置するHCのC〈炭素〉。本来はOH〈水酸基〉が結合する)に蛍光基や金属イオン錯体を付加し、培地に加えて綿花を水耕栽培することで、綿花に蛍光基や金属イオン錯体を取り込ませ、セルロース繊維に組み込む技術である。これにより、特定の特性を有する繊維、いわゆる天然素材をベースにしたテーラード繊維を作製することが可能となる。このような組み込みを行った繊維でも、その破断強度は変わらないことが報告されている。遺伝子組み換えにより特性変化させた繊維には、強度を強くしたスパイダーシルク繊維などがあるが、本技術は、遺伝子組み換えなどの複雑な工程を経るスーパーシルク繊維に比べ、比較的手軽な修飾による天然繊維の創製法であり、他の素材への応用が容易であると考えられる。