大陸を覆う大規模な雪氷の層。氷河と同様、氷床の頂上から周辺へとゆっくりと流れ下っている。頂上付近では、毎年降る雪で氷床が生成され、末端部では表面からの蒸発や融解によって消耗している。現在の地球では、グリーンランドと南極に大規模な氷床がみられる。1980年代から氷床の中央部で大規模な掘削が行われ、回収されたコア(氷柱)の分析から過去の気候変動や大気中の微量元素の濃度の復元が行われている。第四紀の氷河時代にはスカンディナビア半島やカナダのハドソン湾の周辺でも大規模な氷床が発達した。大規模な氷床が発達すると、その重みで地殻や上部マントルが沈降するが、気候が温暖になって氷床が消滅すると大地は徐々に隆起していく。こうした地殻変動を氷河性地殻変動といい、地殻の隆起にともなう海岸線の後退をユースタシー(eustasy)と呼ぶ。地球表面の広い範囲が氷床で覆われた時代を氷期という。最近の地球温暖化傾向のなかで、南極やグリーンランドの氷床が縮小へと向かっているというデータが出されている。また、北極海では海氷は数m程度しかなく、気候変動によって、夏季の分布が急激に減少していることが明らかになってきた。こうした変化は北半球高緯度地方の気候に大きな影響を与えるのではないかといわれている。氷床の融解は海水温の上昇とともに海水準の上昇を促すので、将来的には低地帯の水没が懸念される。