大気・海洋における数年から10年程度で繰り返す変動。エルニーニョ現象が発生するとペルー沖の東太平洋の表面海水温度が高くなる。その結果、寒流のフンボルト海流の流れが弱まって、漁獲高が激減する。逆に高温海水が西太平洋に偏った状態をラニーニャという。エルニーニョとラニーニャの繰り返しには、南太平洋の貿易風の強弱がともなっており、エルニーニョが発生しているときは、貿易風が弱まって、大気の上昇気流の発生場所がラニーニャの発生期にみられる西太平洋から中央太平洋へと移る。こうした大気の変動には気圧の変化がともなわれており、南方振動(southern oscillation)と呼ばれている。現在では、エルニーニョとラニーニャの繰り返しと南方振動は、大気・海洋にまたがる変動を反映したものであるとみなされるようになっており、両者の頭文字をとってENSOと呼ばれている。こうした大気・海洋の変動の歴史を復元する目的で、南太平洋のサンゴ礁でサンゴの掘削が行われている。サンゴの成長にともなって1年ごとに年輪のような縞模様ができていることがあり、歴史時代にまでさかのぼってエルニーニョの発生の時期を明らかにしようという研究が活発に行われている。