中生代白亜紀と新生代第三紀の境界。白亜紀(Cretaceous 頭文字Kはドイツ語のKreideから)と第三紀(Tertiary)の頭文字をとってこう呼ばれている。この境界では、恐竜やアンモナイトなどの生物が絶滅する大量絶滅事件が起こった。1980年にアメリカのアルバレッツらは、イタリアのK/T境界に挟まれる粘土層に注目し、そこに含まれるイリジウム(iridium)という白金属元素を分析した。得られた結果からこの地層に異常に高い濃度でイリジウムが含まれることが発見され、大きな小惑星が地球に衝突して生物大量絶滅が起こったという仮説が提唱された。この仮説は、大論争に発展したが、90年にユカタン半島でこのときの衝突でできたチシュルブ衝突構造が発見され、生物大量絶滅が起こった時期に、大規模な天体衝突があったことが裏づけられた。しかし、この衝突事件と生物大量絶滅の因果関係を巡っては、依然論争が続いており、白亜紀後期からの気候変動によってすでに生物の絶滅率が高まりつつあったことが明らかにされている。また、最近の研究では、チシュルブ衝突構造は生物大量絶滅が起こってから30万年後に起こった事件であるとする指摘もあり、生物大量絶滅の原因を巡る研究は今後も論争が続きそうである。