生命は遺伝情報をもつことと、自分と同じものを作り出すという二つの特性をもち、原始地球で単純な有機物から生まれたと考えられている。材料となった単純な有機物は雷や熱水噴出にともなう化学反応で作られ、また隕石、彗星、惑星間に漂う微細なちりなどによって地球外からも供給されたとされる。生命は遺伝情報をDNAとRNAに依存し、たんぱく質を触媒として有機物から自分と同じものを作る。最近、RNAが触媒作用ももつことがわかった。そこで、生命の原型はRNAが遺伝と触媒の両方を担う形で生まれ(RNAワールド)、やがてDNAが遺伝を、そしてたんぱく質が触媒作用を担う生命の誕生に至ったという考えが主流となっている。これとは別に、熱水噴出孔で黄鉄鉱を触媒に単純な有機物が連鎖的に反応する原始的代謝系が生まれ、これが生命の誕生につながったとする説もある。生物は、生理活動に際して、炭素の同位体のうち13Cより質量の小さな12Cを選択的に体内に取り込む(14Cは半減期の短い放射性同位体で、古い時代の地層からは見つからない)。12Cが濃縮した痕跡らしき炭素は39億年前の地層から、より確実なものは35億年前の地層から発見されており、当時既に地球上に生命が誕生していたことがわかる。地球上の生命はすべて液体の水を必要とするが、火星、小惑星、木星の第二衛星エウロパ、土星の衛星タイタン、大型の彗星などでも有機物とともに液体の水が現存あるいはかつて存在したとされる。そこで、これらの天体にも生命が誕生した、あるいは現在も存在する可能性が指摘されている。また、太陽系外で生命が誕生し、存在する可能性も否定できない。太陽系外の惑星が多数発見されつつある現在、地球外あるいは太陽系外の生命探査も真剣に取り組むべき課題となり、日本でも大型望遠鏡を使った探査が始まっている。