23億年前ごろと、7億年前ごろに地球表面が全面的に凍結するような事件が何回かあったとするスノーボール・アース仮説(全球凍結仮説)が提唱されている。地球の気候が寒冷化すると氷床が徐々に極から赤道へと張り出していく。氷床は太陽光を反射するので、氷床が拡大すればするほど地球の気候は寒冷化する。こうした正のフィードバックによって、氷床が低緯度にまで張り出すと暴走的に拡大して地球表面を全面的に覆うようになる。全面的に凍結した地球をもとの温暖な気候に戻すには、火山ガスとして放出される二酸化炭素が0.1気圧以上に高まらなければならない。これだけの二酸化炭素を大気中に蓄えるには数百万年という時間が必要である。いったん赤道の温度が0℃まで高まると氷床は融け始め、短い期間に氷床は消滅する。あとに残った大量の二酸化炭素の温室効果で地表の温度は50℃ぐらいまで上昇する。その後、水循環が活発化して陸地が浸食され、大気中の二酸化炭素は海洋で炭酸塩岩として堆積して全球凍結事件は終息する。全球凍結事件に対しては、どうして気候が大規模に寒冷化したのか、この事件のあとに躍進する多細胞動物の大進化などの出来事との関連性など、まだ多くの研究課題が残されている。最近、この仮説を提唱したP.F.ホフマンらは、氷河堆積物を覆う炭酸塩岩に巨大な波の作用でできたと考えられる堆積構造があることを報告し、全球凍結直後の異常な気候状態を反映しているものであると論じている。