最近中国南部のドウシャントウの約5億8000万年~6億年前のリン酸塩堆積物中から100μm~1mm程度の大きさの多細胞動物化石が報告され始めた。多くは刺胞動物の胚、幼生や成体の化石である。特筆すべきは、外胚葉で覆われ、内胚葉でできた消化管とその両側に中胚葉で囲まれた一対の体腔があると解釈される化石の断面が10個体も見つかり、小さいながら(いずれも180μm以下)三胚葉性の動物が当時存在したことが明らかとなった。従来はカンブリア紀(5億4300万年)以前の地層から多細胞動物の化石がほとんど発見されないことと、分子時計(DNA分子などの変化速度が一定として生物間での違いを変化に要した時間に換算する手法)により見積もられた出現時期(6億~12億年前)の間にギャップがあった。ドウシャントウの化石は、多細胞動物について、古い時代に小さなサイズで出現しカンブリア紀まで化石に残るほど大きなサイズにならなかったという進化様式を示唆し、化石と分子時計の結果の矛盾も説明でき、重要な発見である可能性が高い。