恐竜に限らず卵の中で育ちつつあった胚が化石として見つかることはまれだが、それでも、ゴビ砂漠の白亜紀後期の地層からは獣脚類(デイノニクスやティラノサウルスなどが分類される)の胚の骨格が、また、パタゴニアの同じ時代の地層からは竜脚類(ディプロドクスやブラキオサウルスが分類される)の大型草食動物の胚の骨格が、いずれも卵の化石中から見つかっている。後者では微細で鉛筆のような形の歯を32本備える個体があり、皮膚の印象も保存されていて、チタノザウルスの仲間の胚と考えられている。さらに、最近中国からは翼竜の胚が白亜紀前期も終わりの頃(1億2100万年前)の湖の堆積物中から発見された。卵の中に著しく長くのびた第4指、頑丈な上腕骨、非常に長細い中手骨などが残されていて、翼竜、とりわけ翼指竜類(プテラノドン)の化石と同定される。胚ではあるが翼を広げると27cm程度の幅があった。