超高圧高温実験によって合成された新しい高圧鉱物。125ギガパスカル、2000K(絶対温度2000度)という条件で下部マントルを構成する(Mg,Fe)SiO3ペロブスカイトが、より高圧型の密度の高い鉱物へと転移する。この鉱物はSiO6八面体と陽イオンが交互に層状に積み重なったような結晶構造をもっている。ペロブスカイトとポストペロブスカイトへの変化は、温度・圧力依存性が大きく、同じ圧力でも温度が低いとポストペロブスカイトが安定、温度が高いとペロブスカイトが安定になる。この鉱物の発見は、地球科学における大きなトピックスとなっている。ポストペロブスカイトが安定になる深さはマントル最深部のD"層と呼ばれる核‐マントル境界の上位200kmの領域に相当している。D"(ディーダブルプライム)層には、明瞭な地震波速度の不連続面が存在するという地震学的研究や、地震波速度の不均質性が大きく、S波速度の著しく低い物質が存在する(超低速度層)という研究、さらに地震波速度の伝わる速さが地震波の伝わる方向によって大きく異なる性質(異方性)が大きいことが知られていた。こうした地震学的観測事実が、ポストペロブスカイトの発見によって、合理的に説明がつけられるかもしれないと多くの地球物理学者は考えている。ポストペロブスカイトの力学的性質や熱力学的性質などに関する今後の研究が注目されている。