西オーストラリアのジャックヒルズに露出する太古代の礫岩(れきがん)中に含まれるジルコン結晶中から発見されたダイヤモンド。先カンブリア時代の地球物質の年代測定は、ジルコン結晶のウラン-鉛年代測定法によって、精度の高いデータが得られていた。ジャックヒルズのジルコン結晶は、44億~40億年前という従来の地球最古の岩石の年代値よりも古い年代を示すものとして注目されてきた。2007年になって、ジャックヒルズの礫岩からとりだされたジルコン結晶に、ダイヤモンドを含む微小結晶が発見されて、注目を集めた。ダイヤモンドは高温高圧下で安定な鉱物であり、ジルコン結晶が形成されてから、結晶中にふくまれていた石墨がダイヤモンドになったとすると、ジルコン結晶は地球深部にまでいったん運ばれ、ふたたび地表で侵食を受けて、地層に取り込まれ、最終的に礫岩になったことになる。現在の地球では、プレートの沈み込みによって地表物質がマントル深部にまで運ばれ、再び地表にもどってくることがある。同様のプロセスが40億年以上も前から作用していたものなのか。ジルコン結晶にはさまざまな時代のものがあり、地表物質の地球内部への循環が継続して起こっていたのか。最古のダイヤモンドが初期地球の物質循環や地球環境について、何を意味しているのか謎は深まるばかりである。