生物の色は、色素によるものと、構造色によるものに大別される。色素は分解されやすく、化石の生きていた当時の色を復元する手がかりにはなりにくい。まれに色が濃淡の模様として保存されることがあり、日本でも新潟県青海の石炭紀石灰岩に含まれる巻き貝の殻などの例が知られている。一方、光の波長あるいはそれ以下の微細な構造で光が干渉されて発色するのが構造色で、蝶の鱗粉や甲虫のさやばねの金属的な色はこの例。九州の60万年前の地層からは、緑青色に輝くハムシのさやばねの化石が見つかっている。ドイツのメッセル(Messel)で出土した約4700万年前の羽毛化石には、メラミン色素を含むメラノソームと呼ばれる構造が保存され、また5.15億年前のバージェス頁岩の環形動物化石カナディア(Canadia)の体表面を覆う棘や鱗には、微細な構造が残り、いずれも何色とは特定されないが構造色を持っていたことがわかる。最近、中国産の約1.5億年前の羽毛恐竜アンキオルニス・ハクスレイの羽毛にも、メラニン色素やメラノソームが見つかり、メラノソームの大きさ、形、密度、分布が詳細に調べられ、現生の鳥と比較され、その結果体は灰色、顔には赤褐色の斑点があり、頭のてっぺんは赤褐色、四肢に生えた長い羽毛は白く、その先端には黒光りする部分のあることが明らかになった。飛翔しないと考えられる恐竜の羽毛に目立った色彩パターンのあることから、恐竜や鳥の羽毛の最初の機能は体を目立たせる役目だったと推定された。