生物が死後に堆積物に取り込まれるまでの過程を調べる研究分野。その過程で死骸から何が失われ、どのようなノイズが付加されたかがわかれば、過去の生物やその生態の復元の精度が向上する。水流や波浪によって違う場所に住んでいた生き物が混じり合っていないか、違う時代に死んだ生き物の遺骸が堆積物中に住む動物によってかき混ぜられていないかなどの研究がタフォノミーに含まれる。貝殻や骨格などの硬組織は、化石として残りやすい。硬組織でも、ホタテガイやカキの殻をつくる方解石は、常温常圧下で他の二枚貝の殻をつくるアラレ石より安定している。このような知識を持って、ホタテガイやカキの殻が目立つ地層を観察するとアラレ石でつくられた殻をもった他の二枚貝の溶けた跡を多数発見でき、もとの二枚貝群集の精度の高い復元につながる。バージェス頁岩をはじめ、保存されることが稀な化石が見つかる地層は、化石鉱床あるいは化石鉱脈と呼ばれる。化石の特殊な保存のされ方の研究もタフォノミーの一分野である。スウェーデンのカンブリア紀後期のオルステン化石鉱床からは、組織が顕微鏡的詳細まで保存された化石を産出する。京都大学の前田晴良博士らのグループは、保存は、動物の糞粒に含まれるリンが組織に染み込むのが原因であることを突き止め、糞粒密集層から保存の良い化石を効率的に得る方法を発見、2011年に報告した。このようにタフォノミーの研究は、保存の良い化石の発見を容易にすることを通じても古生物の詳細な復元に大きな手がかりを与える。