最終氷期から現在の温暖期(完新世)へ移行する時期に、一時的に気候が寒冷化した時期をさす。過去70万年間の地球の気候の歴史は、氷期‐間氷期サイクルと呼ばれ、約10万年周期で、氷河が発達した時代と、氷河が大きく縮小し温暖化した間氷期が交互に訪れている。最終氷期が終わり、地球の気候は一時的に温暖になったが、この時代はベーリング・アレレード期と呼ばれている。この温暖期のあと約1300年間にわたって気候が寒冷になった時期がヤンガー・ドライアス期であり、その始まりは1万2900年前と推定されている。氷床コアの解析によると、その移行は数十年という短い期間で起こった。その原因としては、北大西洋の海洋深層水循環が停止したとする説があったが、北アメリカ大陸に大きな彗星が衝突し、大量の塵(ちり)が大気圏へ巻き上げられて、太陽光を遮ったとする説がある。天体衝突説は、この時代の泥炭層に、ダイヤモンドの微粒子が含まれていることを証拠に挙げている。しかし、最近の研究では、ダイヤモンド粒子は泥炭層に広く分布しており、ヤンガー・ドライアス期の始まりの短い期間にのみみられるわけではないことが明らかにされ、ダイヤモンドの起源が天体衝突によるという解釈に疑問が出されている。一方、大西洋深層水の循環が停滞したとする学説では、ベーリング・アレレード期の温暖化で氷河が融け、北アメリカ大陸では、内陸にアガシー湖という巨大な湖ができ、それが決壊して大量の淡水が北大西洋へ流れ込み、表層海水の塩分濃度が低下して、海洋深層水の潜り込みが止まったとされている。