玄武岩質の岩石の組織を示すエコンドライトの一群で、13億年という若い年代を示すものがある。1980年代に、これらの隕石に含まれる火山ガラス中の気体の化学組成が火星大気に一致することから火星起源であることが明らかにされた。火星起源の隕石では、南極で発見された隕石(南極隕石)に微生物様の構造がみつかったALH84001が有名であるが、これはSNC隕石とは鉱物組成が異なるユニークなものである。SNCはシャーゴッタイト、ナクライト、シャシナイトと呼ばれている隕石分類群の英語の頭文字をとったものである。シャーゴッタイトは輝石と斜長石を主体とし、かんらん石を含む。ナクライトは、オージャイトと呼ばれる輝石からなる。シャシナイトはかんらん石を主成分とする。これらの隕石の化学組成の研究から、火星の岩石は酸化鉄に富んでいること、中心核は硫化鉄でできていること、45億年前に火星内部が大規模に分化したことなどが明らかにされた。隕石母天体でマグマ作用によってできた隕石には、HED隕石、SNC隕石のほかに、アングライト、オーブライトが知られている。アングライトは水星起源であるという説がある。オーブライトは、エンスタタイトという輝石を含んでおり、コンドライトに分類されているエンスタタイト・コンドライトと共通の母天体に由来したと考えられている。