有機物に富んだ粘土質の堆積物。日本語では腐泥ともいう。有機物の含有量が2%以上のものを指す。地層が堆積する海洋底で酸素が乏しくなった時期に形成される。すなわち、堆積物中に取り込まれた有機物が分解されずに埋没してできたと考えられ、海水中の溶存酸素が枯渇したことが原因とされる。地中周辺の新第三紀の浅海性堆積物には、明瞭な縞模様が形成されており、間欠的にサプロペルの層が含まれている。この縞模様はミランコビッチサイクルに伴う環境変動を記録しているとされ、サプロペルの堆積した時期には、海洋循環が停滞し、深海への酸素の供給が減少したためであると考えられている。地質時代には、こうした状況が長期に続いた時期があり、海洋酸素欠乏事件(oceanic anoxia event)と呼ばれている。白亜紀には3回あったが、大規模な海洋無酸素事件はペルム紀末の生物大量絶滅事件でも起こっている。こうした有機物に富んだ地層の有機地球化学的研究によって、嫌気性環境下で光合成を行って生息する光合成細菌に由来する有機分子(バイオマーカー)が発見されている。こうした分子は、太陽光が届く海洋表層部においても酸素が乏しい嫌気的な環境になったことを物語る。