2010年に南アフリカのマラパから報告された約200万年前のヒト科オーストラロピテクス属の新種。ホモ・サピエンスは、霊長類ヒト科ヒト属のほ乳類である。不確かなもの(約280万年前、約230万年前)を除けば、ヒト属の化石種については約200万年前のホモ・ハビリスやホモ・ルドルフエンシス、約190万~90万年前のホモ・エレクトスなどが知られている。いずれもアフリカで暮らしたが、ホモ・エレクトスは、アジアにまで分布域を広げた。ヒト属の祖先として有力な候補は同じくアフリカのオーストラロピテクス属(約350万~200万年前)が挙げられる。この属にはいくつかの化石種が知られているが、この属とヒト属の系統関係については、不明なことが多い。オーストラロピテクス・セディバは、脳容積が小さく、眉間が出っ張っていること、体サイズが小さく、腕が長いことから、オーストラロピテクス属に含められるが、頭蓋骨の上部が左右に広く、側面が垂直であること、また頭線の間隔が広く、頬骨も張らないことなどヒト属と共通の派生的特徴をもつ。とりわけ、寛骨は、この種がエネルギー効率よく歩いたり走ったりできたことを示唆する。こうした特徴から、オーストラロピテクス・セディバは、ヒト属の直接の祖先の生き残りか、あるいはヒト属と共通の祖先を持つのではないかと考えられている。歯の炭素同位体測定、歯石中に含まれるプラントオパールの分析、及び歯の摩耗のしかたの調査から、オーストラロピテクス・セディバは、果実やその他の樹上の食物資源も好んで食べていたと考えられている。