プレートの沈み込み帯で見られる深海生物群集。沈み込み帯の堆積物中の有機物が分解してメタンや硫化水素が形成され、それをバクテリアが使う化学合成生物群集である。1984年にアメリカ・フロリダ沖で最初に発見、同じ年に相模湾初島沖でも見つかっていた。日仏共同海溝計画でフランスの潜水調査船「ノチール」号による調査が行われた際、南海トラフの天竜海底谷の出口や日本海溝第一鹿島海山付近や三陸の宮古沖でシロウリガイを優先種とする生物群集が見つかった。その後、日本海の奥尻海嶺、相模湾、南海トラフなどでも見つかった。太平洋の日本海溝ではシロウリガイに代わって水深7300mの深さまでナラクハナシガイの存在が知られている。現在これが世界最深の化学合成生物群集である。バクテリアマット、炭酸塩チムニー、シロウリガイの存在は冷水湧出帯生物群集の三種の神器と言われている。