海面近くは太陽光がよく届くため、光合成が盛んで植物プランクトンがよく繁栄する。それを食物とする動物プランクトンや、その食物連鎖の上に立つ魚類などが無機質の栄養素を蓄えるので、海水中の栄養分は、その分だけ少なくなっている。これらの生物が死滅して海中を降下すると分解され、海水中の無機質の栄養分は増加する。水温は低くなるので上層に浮き上がることは少なく、その無機質を摂取する動物の数は減少する。したがって、水深200m程度より深い部分の海水は表層の海水より無機質の栄養分に富む。日本では四国の室戸岬沖などで深層の栄養に富む海水を機械的にくみ上げて、魚類の飼育や飲料に混ぜて販売したり、サケの飼育に利用するようになり、成功を収めている。また、深層水から医薬品を抽出する研究も行われている。ここでいう深層水とは、水深300m付近のものが多く、生物学的な深層水の上層のものであり物理学的な意味での深層水ではない。