深海底を掘削し、海底下の試料を採集するための船のこと。1955年ごろには、海洋地殻の厚さは4~10km程度であることが分かっていた。アメリカの海洋物理学者W.ムンクは、深海底を掘削して地殻とマントル最上部の試料を採取することを提案した。これは地殻とマントルの境であるモホ面(Moho)に穴(hole)を開けるのでモホール計画とよばれた。石油掘削船を改造したカス1号(CUSS1)で、61年、メキシコ沖で史上初めて深海掘削に成功。次いで68年、アメリカ主導で海底下試料を採取する深海掘削計画(DSDP Deep Sea Drilling Project)がグローマー・チャレンジャー号(Glomar challenger)で行われた。運営はJOIDES(Joint Oceanographic Institutions Deep Earth Sampling 深海底サンプリング海洋研究所共同研究機構)が行った。75年には深海掘削は国際化され、日本なども参加し、国際深海掘削計画となる。77~78年に日本周辺でも深海掘削が行われ多大の成果を上げた。世界の海で、延べ約33万kmの掘削孔を開け、約10万mに及ぶ試料を採取した。その後、現在も稼働中のジョイデス・レゾリューション号(JOIDES Resolution JR)が完成。この船も石油掘削船を改造したものだが、性能は格段に向上している。また、参加国も増加して、計画の名称はODP(Ocean Drilling Program)となった。89年に伊豆・小笠原海溝、日本海、南海トラフなどで深海掘削が行われ、大きな成果を上げた。ODPはその後統合深海掘削計画(IODP Integrated Ocean Drilling Program)として出発する。日本では地球探査船「ちきゅう」が建造され、米国のJR号とともに深海掘削を開始した。「ちきゅう」は海底下7000mまで掘れるので主に深部掘削を、JR号は主として浅い掘削を担当する。掘削の主な目的は地震発生帯や地下生物圏の研究である。