海水の水素イオン濃度から求められるpH(ペーハー)はおよそ8.1のややアルカリ性であるが、pHが7.9から最悪で7.7くらいに減少してやや酸性に転じる現象をいう。その原因は、(1)大気中の炭酸ガスが海水に溶け込み海水の炭酸ガス濃度が上昇してpHが下がる、(2)極域の海氷が急激に溶けて海水のpHが下がる、などが考えられる。最近、気象庁などによる紀伊半島沖の海域や、海洋研究開発機構やカナダ漁業海洋省科学研究所による北極海での長期にわたる観測の結果、それらの地域では海洋の酸性化が進んでいることが明らかにされてきた。海洋が酸性化すると、あるいは海水中の炭酸イオンの濃度が減少すると、炭酸カルシウムの殻を持つ有孔虫などのプランクトンや貝類、さらにサンゴなどの生物が殻や骨格を作りにくくなり第一次生産者が減少し、甲殻類や魚類に必須の物質が減少するために海洋の食物連鎖に大きな影響を与えることが懸念されている。