赤道付近のフィリピンやインドネシアの東方の西太平洋海域は、通常の赤道地域に比べて海面の温度が世界で最も高い地域であり、水温は29℃以上にもなる。このような海域のことを暖水プールと呼んでいる。この海域の暖水プールの上では、大気の対流活動が極めて活発である。海水温の変動は地球規模での大気の循環に大きな影響を与える。高温の水は赤道付近を吹く貿易風と強い日射によってできる。日射によって加熱された赤道太平洋の表層付近の暖かい水が、海流によって集められるのである。また西側の大陸から吹いてくるモンスーンと、東から吹いてくる貿易風が出会う地域では、大量の積乱雲が作られて激しい雨が降る。淡水の雨が海水の表面を覆うと、一種のレンズのような役割をして太陽の光を集めることで海水を高温にする。暖水プールが東へ移動すると、湧昇流(ゆうしょうりゅう)による海面への上昇を妨げ、これに含まれるものを栄養源とするプランクトンの増殖を抑制するエルニーニョ現象を発生させる。