津波で運ばれた堆積物によって形成された層で、陸に堆積したものと海に堆積したものとがある。どちらも乱泥流堆積物や土石流堆積物と類似している。陸上の津波堆積物は海岸に沿って発達する平野の地層に含まれる。海岸平野では海岸に沿って高い砂丘が発達し、その陸側は平坦な低地、湿原や干潟になっている。湿原では流れが穏やかなため、砂は堆積せず、植物や泥が堆積する。巨大津波は海岸から砂丘を乗り越えて流れ込むため、砂浜と砂丘の砂を浸食して湿原まで運搬し、砂層ができるため、砂に含まれる珪藻化石を分析することにより津波堆積物と認定できる。海底堆積物はピストンコアラーや掘削によって得られるが、明らかに津波によって運ばれた堆積物を認定するのは難しい。陸上に大雨が降って河川が氾濫(はんらん)し、土石流や乱泥流が発生してその土砂が海底に運ばれても同様の堆積物となるからである。たとえ陸上の植物の遺骸が含まれていても大雨で河川の氾濫によって運搬された堆積物との区別ができない。