海水や湖沼の鉛直方向に水温が急激に変化する層状の部分。躍層(やくそう)ともいう。多くの場合、海水の塩分に起因する密度の変化でできる密度躍層に対応する。通常、外洋の海水は深くなるにつれて温度が低くなるが、途中で急に低温の層が見られることがある。海や湖は表面から日光で温められるが、表面近くは風や波の影響によって混合されるため、深さが変化しても温度はあまり変化しない。一方、日光が直接届かない深さでは低温が維持されるため、上層の温かい層との境界に温度の急激に変化する層ができる。短時間の変化では、昼間温まり夜間冷えるという日変化や、夏に温まり冬に冷えるという季節変化もある。ほぼ定常に保たれる水温躍層も存在する。海域や気象状況などによって異なるが、日変化水温躍層はおよそ数メートル以浅、季節変化水温躍層は数百メートルで、定常水温躍層は1000メートル程度の深さに発達する。それより深部の水温はほとんど変化しない。水中の音速は温度により変化するため、温度躍層の変動は潜水艦のソナーの性能に大きな影響を与える。正午ごろは海面温度が急上昇することにより顕著な温度境界が生じ、浅深度で発信するソナーの探知能力が極端に低下する。