南極大陸では、厚い大陸氷が毎日数センチメートルから数メートルの速度で移動し、高い山から南極海へと流れ下る。南極の海岸にある棚氷を越えて海の中に流れ込んだ氷は氷山となって海の中を漂う。これが流氷である。流氷には海氷が岸から離れて海中を漂うものもある。海氷が波によって岸に運ばれて山を造ることもあり、これを氷脈という。オホーツク海では冬は寒さが厳しく、アムール川やレナ川から運ばれる淡水が凍ってその河口が結氷してしまうことがあり、これが岸から離れると流氷になる。流氷はさまざまなものを運んでいく。流氷には植物プランクトンが付着しており、それを食べる動物プランクトンが群がる。アザラシなどは流氷に乗って移動し子育てをするものもある。流氷によって動物が移動することは生物学的に重要である。沿岸氷は周辺の礫(れき)や砂を取り込んでいることがあり、これが南へ移動して氷が解けると、含まれていた礫や砂を放出し、それが海洋底に堆積すると、アイスラフティングと呼ばれる現象が起こる。ハワイから北北西へ線状に連なる天皇海山列の頂上から大きな花崗岩の円礫がみつかり、これがカムチャツカ半島からの流氷によって運ばれたことが明らかになった。