金星が地球と太陽の間に入ることにより、太陽面上を金星が通過していくように見える現象。「金星の太陽面通過」とも言う。2012年6月6日に起こり、天候に恵まれて多くの地域で観察できた。次回は2117年である。金星と地球の軌道面の傾きは小さく(約3度)、しばしば起こりそうだが、実際には8年、105.5年、121.5年といった周期で起こる。日面通過時の金星の見かけの大きさは太陽の30分の1で、光度変化は0.001等に過ぎず、この点での効果はないに等しい。かつてハレーの提唱により、1761年と1769年の日面通過の際に1天文単位の長さ(太陽・地球間の距離)を測定するために利用されたことがあった。当時、1天文単位=1.4億キロメートルというカッシーニらの求めた値があったが、この観測から1.53億キロメートルが得られた。現在の値は1.496億キロメートルである。日面通過時に同時に地球上の離れた2点から金星を観測するとずれて見えることから、金星までの距離を求めることができる。一方、太陽から金星と地球までの距離の比は分かっているので、これによって太陽・地球間の距離が求められるという原理である。