国立天文台が岩手県・水沢VLBI 観測所に2013年4月に設置した数値天文学研究専用のスーパーコンピューター。自然科学では実験・観測と理論が相まって進められるのが通常の研究スタイルで、対象が宇宙でも同じで、理論計算は重要な研究手段である。ところが、最近の理論では得られた式が素直に解けるケースはまれで、いわゆる数値的解法という手法をとらざるを得ない。たとえば、多くの星が力を相互に及ぼしあっている銀河のような振る舞いを調べるシミュレーションなどがこれにあたる。このような場合、現実の状況に即した解を得ようとすれば、できるだけ多くの天体を対象とし、できるだけ短い時間刻みで計算しなければならないので、大型で速いコンピューターが望まれる。国立天文台では天文シミュレーションプロジェクトを立ち上げていて、その主力機器として設置されたのが、この大規模並列スカラ計算機のアテルイ(米クレイ社のCray XC30システム)である。現在、1 Pflops(1 秒間に1 千兆回の演算を行う)の理論演算性能を達成しており、天文学用としては世界最速という。機体本体を設置環境の良い奥州市水沢に置き、通信回線を通して利用するというネット時代ならではの計画となった。なお、アテルイとは約1200年前に水沢付近にいた蝦夷の英雄のこと。