大学と企業の連携機能を扱う代表的な組織の一つ。研究者は研究成果の実用化に関心が薄いことが多く、有用な知識が研究組織に死蔵される傾向が強かった。そこで、研究者の研究成果を特許化したり、製品開発に利用する企業への橋渡しを行うことを目的としてTLOが設けられた。TLOは、企業化に成功した際のロイヤリティーを受け取って、機関や個人に配当する。ただし、実際にはこれから生まれる利益は一般社会の期待ほど大きくはなく、大学等の社会貢献の性格が強い。収益は最大の2005年で30億円弱に過ぎず、近年ではその3分の1以下である。その金額は、特許出願経費を下回っている。アメリカでは、1980年のバイ・ドール法によってTLOの設置が本格化した。日本では、98年成立の大学等技術移転促進法に基づいて、大学あるいは大学を中核とした地域にTLOが設立され、36組織が文部科学省と経済産業省から承認されている。他に、関係省庁から2組織が認定を受けている(2016年9月現在)。その総数は、漸減の傾向にある。近年では、大学の知的財産を管理する知的財産本部や産学連携本部の活動に融合され、知的財産戦略の一部を担う方向に向かっている。TLOの問題点として、大学の研究の公開制が特許と原理的には矛盾すること、技術開発が公開ベースで行われる場合(オープン・ソー ス)、あるいは組織の枠組みを超えて行われる場合(オープン・イノベーション)が増えてきていることなどが指摘できる。これへの対策として、大学などが取得した特許の研究段階での利用を認める科学技術コモンズの運用が、10年秋から始まっている。