ある科学技術が将来もたらす(あるいは既にもたらした)便益とリスクの大きさを予測し、安全性や危険性評価の根拠を提供するための科学。アメリカの環境保護庁(EPA)などは、これを担う典型的な機関。レギュラトリーサイエンスでは基礎科学や応用科学の成果を利用するが、目的も価値観もそれらとは異なる。安全性の判断には、純粋に科学的な観点だけでなく、社会的な視点も加わるためである。たとえば、ある化学物質のリスク・便益の分析には、社会がどの程度のリスクまで許容するか、といった価値判断が入り込む。予測と評価の科学であるため、結論の科学的妥当性には不確実性が避けられない。安全規制行政の意思決定を支援する科学(規制科学)として機能する場合には、時間や予算といった制約が不確実性を拡大する。したがって、結論に至る手続きの社会的正統性が求められる。この新しい科学は、1970年代以降、主に規制科学の方向から国際的に注目されてきた。特に、医学、薬学、農学などで早い時期から普及が見られた。だが、より幅広く問題をとらえるならば、「科学技術の所産を人間との調和の上で最も望ましい姿に調整(レギュレート)して方向づけるための予測と評価の科学」と見ることもできる。第四期の科学技術基本計画では、レギュラトリーサイエンスの強化がうたわれた。