科学技術が社会に引き起こす問題、あるいは社会が科学技術に与える影響を、 既存の学問分野を総動員して分析しようとする研究分野、またその教育。STSが「科学技術と社会」(science, technology and society)を意味する場合には、科学技術が引き起こす社会的矛盾、理科教育の諸問題、科学技術政策といった実社会の具体的な事象が課題となることが多い。「科学技術社会論」(science and technology studies)を意味する場合には、科学史・科学哲学・科学社会学などの学問的分析との連携が強調される傾向がある。STSの関連用語として、ELSI(ethical, legal and social issues、またはimplications 科学をめぐる倫理的・法的・社会的課題)やELSA(ethical,legal and social aspects、同課題の欧州での表現)という表現もしばしば用いられている。STSをめぐる活動は急速に発展しており、科学社会学会(4S)、ヨーロッパ科学技術論連合(EASST)、東アジアSTSネットワーク(EASTS)などが国際的な研究を組織している。日本では、2001年に科学技術社会論学会が発足し、10年には、同学会と4Sが東京で合同会議を開催した。04年から、政府の主導でSTSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)が毎年開催されるなど、注目すべき動きもある。これは、ブダペストを主な開催場所として03年から隔年開催の世界科学フォーラム(World Science Forum)と補完関係にある。