オーストリアの経済学者シュンペーターが、著書『経済発展の理論』(1912)で提示した考え(そこでは新結合と呼ばれた)。経済をシステムと見たとき、投入と産生が一定であれば均衡状態となり経済発展は起こらないはずである。にもかかわらず、実際には発展が起こる場合がある。その原因を、経済システム内部の創造的破壊に見ようとする立場。具体的には、経済システム中で生産される新たな財が加わったり、財の生産方法が変わったりすることがある。さらに、新たな販路の開拓、原材料や半製品の新たな獲得、企業の新たな組織の実現の3つを加えて、5つの場合が想定された。日本語では当初「技術革新」と訳され、この5つのうちの最初の2つがプロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーションとして強調された。そのため、科学技術が進歩して新たな技術商品が登場する、あるいは新しい製造方法が誕生するという単純な意味で用いられることが多い。単なる技術進歩をイノベーションという言葉で表現することも少なくない。誤用とは言い切れないが、正確さを欠く。イノベーション戦略を論じる場合にも用語をあいまいに用いる傾向が強く、より幅広く正しい理解が求められる。最近では、新たな社会的価値を生み出すことに焦点を置いたいわゆるソシアル・イノベーションに関心が高まり、イノベーションの多様性の理解の面では、多少の是正は見られる。