細長い帯を半回転ひねった状態で末端同士をくっつけた図形。メービウスの輪、メビウスの帯、メビウスの輪などとも呼ばれる(図「メービウスの帯」参照)。メービウスの帯が刺激的なのは、表面に見える面を同じ方向に進んでいくと、いつの間にか裏面を進んでいることになるというように、表面と裏面の区別がない点である。このような曲面を向き付け不可能(non-orientable)といい、向き付け不可能な二次元曲面は必ずその中にメービウスの帯を含んでいる。また、帯を中心線に沿って切っていくと、2回ひねられた細長い帯になるなど、特異な性質ももっている。
数学から生まれた数々の奇妙な図形は、多くの芸術家の創作意欲をも刺激してきたが、もっともよく使われたのがこのメービウスの帯である。メービウスの帯をモチーフに多くのトリックアートを発表してきたTak Mitani(タク・ミタニ)氏は、1995年の第12回国際ビエンナーレ展のグラフィック&ドローイング部門で最高賞を獲得している(図「メービウスの帯をモチーフにした作品例」参照)。