世論調査で選挙民の行動が変わること。1983年の参議院選挙のあとの世論調査で、「選挙の投票に、選挙情勢の報道を参考にしたか」という質問が設けられた。例えば、「A候補が危ない」と聞くと、その支持者はやはり投票しに行こうということになる。逆に、A候補は3位以下となれば、行くのをやめるかもしれない。
世論調査の結果では、「(報道に)『左右されず』が8割」というような見出しが掲げられることがある。おそらく、「たった2割しか左右されないので、あまり選挙結果に影響を与えない(だから、選挙報道をしても構わない)」という意味の見出しなのだろう。
しかし、選挙民の2割の人が選挙報道に左右されるのであれば、かなり大きな影響があることも確かである。衆議院選挙で、「選挙民の1割が棄権をしないで(実際には、4割は棄権している)、次点の候補に投票したらどうなるか?」というシミュレーションをしたことがある。この結果、7割の選挙区で逆転が起こることがわかった。選挙民の1割の行動で7割の選挙区の結果が変わってしまうのだから、その影響は「たった1割」とはいえない。
似たような例として、「水田をつぶすと、環境に対して甚大な影響を及ぼす」との説に、ある経済学を専攻する研究者が、「水田は日本の国土の3%もない。これをつぶしても、そんなに影響はない」と反論したことがある。実際は、国土に占める水田の割合と、それが環境に及ぼす割合とは、まったく別問題で、等しくはならない。