パラメーター(変数)の変化が規則的なのに、不規則な挙動をとるものの一つ。この現象は物理や生物の世界では、よく知られていた。しかし、数学的に定式化したのは、アメリカのT.リーとJ.ヨークの論文といわれている。彼らは、
y=f(x)=ax(x-1)
(0≦x≦1,0≦a≦4)
なる関数の挙動を論じている。関数f(x)を繰り返し作用させてxの動きをみるのである。f(x)を2回作用させたものをf{{f(x)}}=f2(x)と、3回ならばf{{f2(x)}}=f3(x),……などと書く。このとき、fn(b)=bとなるbを周期nの周期点(periodic point)と呼ぶ。aを増加させていくと、この周期点の挙動が、複雑な様相を示すのである。
この例を一般化して、次のような対応fを「カオス的」という。
(1)fの周期点がいたるところにある。
(2)fの繰り返しによって、「近い初期条件のもので大きな隔たりが生じる」点がいたるところにある。
(3)nの値を変えていくと{{fn(c)}}がいたるところをさまよう点cがある。
なお、ここでいう「いたるところ」は、「実数のどんな小さい区間にもある」という意味。
カオスは今まで解けなかった複雑な現象を解くカギとして、自然科学のみならず経済学などでも注目されている。