もともとはブラウン運動(Brownian motion 水中を浮遊する微粒子の不規則運動)を記述する運動方程式として提出されたものである。ブラウン運動は熱運動(thermal motion)する水分子が微粒子すなわちブラウン粒子(Brownian particle)にランダムに衝突を繰り返すことで起こるのだが、P.ランジュバンはこのミクロな衝撃力の効果を、平均的な効果を表す摩擦項(friction term)と、それからのゆらぎ(fluctuation)を表す揺動力(fluctuating force)の項とに分離することでうまく記述できることを見いだした。揺動力は通常最も単純な白色ガウス雑音(white Gaussian noise)で近似される。その場合ランジュバン方程式はブラウン粒子の確率分布関数に対するフォッカー・プランク方程式(Fokker-Planck equation)と等価であり、後者は決定論的な方程式である。一般にマクロな物理量は原子分子の熱運動によってたえずゆらいでおり、これを一般化されたブラウン運動とみなすことができる。したがって、対応するランジュバン方程式はマクロな物理量の最も一般的な運動方程式を与える。この立場から不可逆過程統計力学(statistical mechanics of irreversible processes)の一般論を定式化したのが、森肇による一般化ブラウン運動(generalized Brownian motion)の理論である。