液体を冷却すると結晶化することなく液体構造に似た不規則な分子配列のままで固化することがあるが、そのような固化状態をガラス状態と呼ぶ。非晶質、無定形(アモルファス amorphous)とも呼ばれ、なじみ深いケイ酸塩ガラスもその一例である。過冷却液体からガラス状態に変化するとき、狭い温度範囲で熱容量が激減するなど物性の急激な変化が見られ、これをガラス転移と呼ぶ。ミクロに見れば、ガラス転移は分子の配置換えに関する運動の自由度が失われる状況に対応すると考えられるが、転移のメカニズムの詳細は不明で理論的取り扱い方法も十分ではない。磁性体(magnetic substance)でもスピンの配向がランダムなまま凍結する状態が知られ、スピングラス(spin glass)と呼ばれる。ガラスやスピングラスにおいては、分子やスピンのランダムな配置には無数の可能性があるはずだが、これらの配置間の遷移が事実上不可能になった状態とみなされる。熱力学的にはこのような状態はきわめて緩和時間の長い準安定状態(metastable state)であると考えられる。