動的機能を示す人工的な遺伝子ネットワークの最初の例として、M.エロヴィッツとS.ライブラーが2000年に実現した系に対して命名されたものである。遺伝子の発現は、一般に他の遺伝子によって間接的に抑制されたり促進されたりしているが、そのようなネットワークの構造と働きを知ることはポストゲノム科学における最重要の課題である。世紀の変わり目ごろからは、標準的な分子生物学的技術によって比較的単純な機能をもつ小さな遺伝子ネットワークを人為的に合成しようとする研究が活発化している。大腸菌で実現されたリプレッシレーターは三つの遺伝子A、B、Cを含み、AがBを、BがCを、CがAをそれぞれ抑制するというループ状のネットワークである。それは数時間の周期で振動する遺伝子発現を示し、ネットワークに連動した緑色蛍光たんぱく質の濃度変化が蛍光強度の変化として観察される。その後、より安定した振動的振る舞いを示す系が、抑制と促進の相互フィードバックを含む2遺伝子系で作成されている。これらの仕事を含め、遺伝子やたんぱく質を構成要素とするネットワークの研究では、数理モデルと非線形物理学の諸概念が重要な役割を演じている。