同期現象(シンクロ現象)とは、固有周期が一般に異なる複数の振動過程の間に生じる現象であり、相互作用の結果としてそれらが完全に同一周期を獲得して歩調をそろえて振る舞うようになる現象である。振動する要素(振動子)が多数集まって大集団を成すと、適当な条件の下にそれは一つの巨大な振動子のように振る舞う。これを集団同期と呼び、ホタルの集団的発光リズム、心臓の右心房にある洞房結節の細胞集団が同期することで生み出される心拍、視交叉上核の時計細胞集団が生み出す概日リズム、高圧送電線網を流れる交流電流の同期、コンサートホールにおける拍手の同期などを通じて日常生活とも深くかかわりをもっている。集団同期は生命過程のさまざまな局面でも重要な役割を演じている。たとえば、脊椎動物の中胚葉が一定間隔でくびれる体節形成では、細胞群の活動性が同期波として伝播する過程が重要であり、膵臓のランゲルハンス島に含まれる多数のベータ細胞からはインスリンが同期して分泌されている。同期現象ないし集団同期現象の科学は分野横断的な科学であるが、そこでは多数の構成要素から成る系を扱う統計力学的手法や概念が有効なことから、近年多くの物理学研究者がこの分野に参入している。