近年、液体の滴や泡の融合過程に関する物理学的研究が盛んになっている。日常生活でも見られるこのありふれた現象は、流体物理学的および統計物理学的に興味深いだけでなく、生物における細胞の融合や銀河団の融合などとも関係し、工学的にも医学や製薬などさまざまな分野への適用が期待されている。また、高速カメラの開発によって融合過程が詳細に観察できるようになったことも、この分野の発展を支えている。
たとえば液滴の場合を考えると、それらが融合するのは、それによって表面エネルギーが減少するからである。このとき、表面エネルギーの一部は熱エネルギーとして散逸され、それ以外は液体の運動エネルギーに変換される。二つの液滴が接着しはじめると、まず両者をつなぐネックができる。接着直後にはこのネックは細いので、液体の粘性の効果が強く効き、これによるエネルギー散逸が支配的である。融合の後期には流体運動による運動エネルギーへの変換が支配的になる。このような考察に基づいて、時間とともにネックの半径が大きくなる過程を理論的に調べると、得られた曲線は粘性の異なるさまざまな液体について共通の普遍法則を与えていることがわかる。