創薬の基本戦略はハイスループットスクリーニング(HTS ; high-throughput screening)、すなわち膨大な化合物群の中からロボットなどを用いて、標的のたんぱく質の鍵穴にうまくはまるリード化合物(lead compound)を選別する技術である。しかし、従来のリード化合物は分子量が500程度のものが多く、薬理活性はそれにともなって大きいが、開発費もかさむ。もし、もっと小さい化合物、リード化合物のフラグメント(fragment 小さく、単純な化合物)に相当する分子量300以下の化合物(→「高分子」)からスタートできれば創薬のコストの削減が期待できる。これまで、そのようなフラグメントが無視されていたのは、その活性が弱いためにリード化合物への導入が困難だったからだが、近年のバイオインフォマティクス(生命情報科学)の発展により、鍵穴によりよくフィットする鍵分子フラグメント、およびそれに付け加えてリード化合物に導くフラグメントの探索がやりやすくなり、FBDDの手法が確立した。HTSに比べて低コストであるため、はじめは多くのバイオベンチャーが取り上げたが、すでに大手製薬会社もFBDDを併用する方向に動いている。FBDDの利点は、単にコストだけではない。リード化合物の分子量が小さいと、薬効不足や不測の副作用を防ぐ効果もある。また、小さい分子は大きい分子に比べて脂溶性(油脂への溶けやすさ)が低く、水溶性(水への溶けやすさ)が相対的に高いため、基質たんぱく質と特異的に結合する確率も高くなる