エネルギー問題の解決のために今後一層研究すべきは、産業廃熱のような未利用エネルギーの有効利用であり、そのためには蓄熱技術の向上が重要である。蓄熱は保冷剤や、夜間電力を利用した家庭用貯湯式給湯器など身近な技術である。さまざまな蓄熱法の中で化学蓄熱は、蓄熱材の単位面積あるいは単位質量当たりの蓄熱量がもっとも高い方法とされている。化学蓄熱に用いられる化学反応は、可逆反応で副反応がなく、さらに反応物の混合・分離が容易であることが要求される。これらの条件を満たすのは固体と気体との間の反応であり、その一例が、
(1)「酸化マグネシウム+水」と(2)「水酸化マグネシウム」
の系に成り立つ可逆反応である。この系では高温・低圧条件では酸化物が、低温・高圧条件では水酸化物が安定である。また、(1)→(2)の向きの反応は発熱反応(熱の出力)で、(2)→(1)の向きの反応は吸熱反応(蓄熱)である。ごみ焼却工場や自動車の排熱の温度域(200~300 ℃)では、この系は(2)→(1)の向きに反応が進むので効率よく蓄熱でき、実用化が期待される。改良して作動温度が100~200℃の系が得られれば、応用範囲は一層広がるだろう。