福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散がきっかけとなって、放射能を測定する線量計が極めて身近な、切実なものとなった。線量計として最も歴史の長いガイガー=ミューラー計数管(ガイガーカウンター Geiger-Mller counter)は、電離放射線を検知し、その回数をカウントできる装置であり、シンチレーション検出器(scintillation detector)は、電離放射線を受けたシンチレーターから出た蛍光を測定する装置である。シリコンまたはゲルマニウムを用いる半導体検出器は、個人の被曝量の測定や核種の同定などに用いられる。これらはいずれも物理現象を利用した検出器であるが、放射線エネルギーの吸収によって化学物質が酸化または還元された量、あるいは光化学反応によるヨウ化物イオンの変化量などから吸収エネルギー量を測定するような化学線量計も用いられている。
最近広島大学で開発された化学線量計は、放射線によって生じたヒドロキシラジカルとベンゼンが反応して生じるフェノールの濃度から放射線量を直接測定する装置である。手のこんだ装置を使わなくて済むので、安価に製造できる可能性があるが、現状での検出限界は40μSv/h(マイクロシーベルト/毎時)と、文部科学省が目安とする福島県の学校での屋外活動制限値1μSv/hに比べてまだかなり高く、実用までにはさらなる改良が必要である。