化学におけるコンピューターの高度な利用の一例は、反応データベースと探索エンジンとを組み合わせた自動合成経路探索プログラムで、1990年ノーベル化学賞を受賞したアメリカのE.J.コーリー博士らのラサ(LHASA ; Logic and Heuristics Applied to Synthetic Analysis)などがよく知られている。2011年4月には、ケミカルアブストラクツサービス(CAS ; Chemical Abstracts Service)が、この手法を拡張した反応経路検索プログラム「サイプランナー(SciPlanner)」を開発。目的化合物の構造式を入力すると、「サイファインダー(SciFinder 化学を中心に科学技術情報を網羅する、研究者向けのオンライン検索サービス)」を通じてアクセスできる膨大な文献データベースから最適な反応経路を検索してくれるため、化合物の設計、合成を効率化できると期待される。開発ツールの基本戦略はコーリー博士らも用いた逆合成経路の検索だが、文献、実験の概要、必要な試薬などの情報が同時に得られて使い勝手がよい。