長時間にわたる使用によってこうむった機械的な損傷を、構造内に内蔵した能力(機能)によって修復できる材料をさし、スマート材料(smart material 物理的な刺激に応じて特定の反応を示す材料。知的材料<intelligent material>とも)の一種である。傷を自ら修復できる生物の働きにヒントを得て開発されてきた。材料に起こる顕微鏡的なひび割れなどの損傷は、材料の熱的、電気的、機械的性質などを次第に変化させ、最終的には材料の全面的な劣化に至る。従来は、これらの損傷は人手で修理されていたが、最大の問題は微小な損傷の発見が一般的にきわめて困難な点である。それゆえ、通常の経年使用によって生じる損傷を内在する能力で修復できる高分子、セラミックスなどの材料の有用性は計り知れない。現在、世界各国でさまざまな自己修復材料の開発が進められている。例えば高分子材料の自己修復には、修復材を含むミクロカプセルを材料に内蔵させる方法、ゾル-ゲル反応(液体にコロイド粒子が分散しているゾルを、加熱などで流動性を失ったゲルに変化させる方法)あるいは可逆反応を利用する方法などが用いられている。自己修復材料の用途は多岐にわたり、日常生活にも深く関わってくるが、一方、航空機の燃料タンクや宇宙ステーション、2011年に計画終了で引退したスペースシャトルの材料といった、特殊だが重要な分野にも大きな需要がある。