多くの地方で水不足に悩まされてきた人類は、その対策にさまざまな工夫をこらした。古代の雨乞いに始まり、20世紀半ばには、ノーベル賞学者のI.ラングミュアらが科学的な方法で人工降雨の実験に取り組んだ。以後、さまざまな国で、さまざまなレベルで努力が続けられている。人工降雨には雨雲をつくる方法と、雨雲から雨や雪を降らせる方法があるが、現実的な方法は後者であり、基本は水蒸気の微粒(雲粒)を地表に落下できるだけの重さをもつ氷の微粒(氷晶)に変える技術である。よく用いられているのは、ドライアイス(固体二酸化炭素)とヨウ化銀(AgI)の散布である。ドライアイスは雲粒を冷却して氷晶に変え、ヨウ化銀は自分が核となって雲粒を集めて氷晶をつくる。最近、筑波大学、福岡大学、九州大学の研究チームは液体二酸化炭素(5.2気圧/-56.6℃で液化する)を飛行機の上から散布して、かなりの量の雨を降らせるのに成功した。ユタ大学の故・福田矩彦教授の発明になるこの方法は、ドライアイスやヨウ化銀を用いる方法よりはるかに安価であり、実用化が期待される。