形状記憶ポリマー(shape memory polymer)とも呼ばれ、加熱して柔軟性をもたせて変形させた後、それを低温で固定しても、加熱すると再び元の形が回復する特性をもっている。高分子が架橋構造などをつくって固定点を形成している固定相と、ある温度以上に達すると流動的になる樹脂の可逆相から構成されているため、変形後、加熱によって可逆相が溶融すると、固定相の架橋構造などがゴムのような特性を示して元の形に戻る。熱収縮チューブとして通信ケーブルのジョイントカバーなどに用いられている架橋ポリエチレン(crosslinked polyethylene)では、チューブを加熱し、約2倍の内径に拡張して冷却固定しておき、ケーブルのジョイント部分をその中に通した後にあらためて加熱すると、2分の1に収縮してジョイントに密着し、カバーができる。鎖状のポリエチレンも糸状の分子の絡み合いで構造を記憶するが、その効果は十分ではなく、鎖の間を架橋して固定点を形成して網目状構造をもたせると、元の形状をより強く記憶する。合成ゴムの一種であるトランスポリイソプレン(trans-polyisoprene)は、硫黄などによる鎖間の架橋で固定点ができ、70℃に融点があって可逆的に軟化と固化を繰り返すことができるので、形状記憶樹脂としての条件を備えている。その他にも形状記憶の機構が異なるものがあるが、ポリノルボルネン、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリウレタンなどが形状記憶樹脂として知られている。これらの樹脂は異なる径のパイプの接合剤、パイプ内のライニング(内張り)、自動車のバンパー、さらにはギプスなどの医療用器材などに用いられている。