光の回折現象のため、通常の光学顕微鏡が到達できる最良の分解能は、ドイツの物理学者E.K.アッベがすでに19世紀末に示したように250nm(ナノメートル:10億分の1m)程度である。一方、現代科学の中心的課題であるたんぱく質の大きさは3~30 nmであり、光学顕微鏡の出番はなかった。しかし、近年、この分解能を超える分解能を示す光学顕微鏡の一種である超解像顕微鏡が開発され、多くのメーカーによる市販品が普及するに至った。超解像顕微鏡の方式の一つには、照明法の改良によって分解能を150nm程度にまで向上させる構造化照明顕微鏡法(SIM ; structured illumination microscopy)がある。レーザー光の一次回折光を試料に照射すると、縞状の照明パターンが得られる。これを試料に導入した蛍光分子の励起光として用い、縞の位置と方向を制御して規則正しく繰り返し照射すると、周期のずれによる縞模様(モアレ縞)が得られる。この縞は照明パターンの周波数と試料の蛍光の空間周波数成分とのずれによって起こるので、試料の細かい構造情報を含んでおり、高い分解能が得られる。試料に導入した蛍光分子を別々のタイミングで発光させる方式では、30nmあるいはそれ以下の分解能が得られるものもある。